このような疑問にお答えします。
流氷の天使ともよばれているクリオネ。
日本では、北海道のオホーツク海側でみることができます。
私も北海道で流氷ツアーに行った際に、クリオネを観たことがありますが、ふよふよと泳ぐ姿はかわいらしかったです。
そんな天使のようなクリオネですが、実は捕食の際には頭部から触手を出して獲物を食べるという二面性を持つので、びっくりする方も多いのだとか。
今回は天使のような顔と、ちょっと怖い悪魔のような一面をもつ「クリオネ」についてみていきたいと思います。
「クリオネ」とはどんな生物なのか、その生態についてや、自宅での飼育法などもご紹介してk¥いきます。
「クリオネ」について詳しくなって、もっと愛でていきましょう。
目次
クリオネってどんな生物?
日本では、知床や紋別などの流氷が着岸するオホーツク海側でしか見ることのできない「クリオネ」。
どんな見た目かは知っているけれど、なかなか実物を観たことはないという方もいらっしゃるかと思います。
どんな生態なのかを知る機会が少ない「クリオネ」。
「クリオネ」とは、どんな生物なのかについておさえておきましょう。
クリオネとは
まず辞書では、どのように解説されているのかをみていきましょう。
クリオネ【clione】 の解説
《学名の一部からの名》ハダカカメガイ科の巻き貝ハダカカメガイの通称。
貝殻はなく、体はむきだしで半透明。
形は十字型で頭部の消化器が赤い。
体長約3センチ。水中を羽ばたくようにして浮遊し、仲間の巻き貝を捕食する。
日本では北海道のオホーツク海沿岸に流氷とともに現れる。
出典引用:goo辞書
このように解説されています。
貝殻がないのに、クリオネは貝の一種であるということに、私はちょっと驚きました。
ちなみに英語圏でも天使の意味で、「シーエンジェル」と呼ばれているのだそうですよ。
一口メモ
クリオネの種類の中でも、一番大きな種「クリオネ・リマキナ」の「リマキナ」の方の意味は、なんと「ナメクジ」。
女神とナメクジが一緒になった学名というのも面白いところです。
ちなみに北海道でよくみられるのは、「クリオネ エレガンティッシーマ」(Clione elegantissima)という種類のクリオネです。
クリオネの特徴
クリオネは、腹足綱裸殻翼足類(裸殻翼足目、または後鰓目裸殻翼足亜目)ハダカカメガイ科、ハダカカメガイ属に属する貝の一種です。
そんなクリオネの外見や体の構造について、具体的にみていきましょう。
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1外見
外見の特徴をまとめると、以下の通りです。
特徴
- 透明な体。
- 体長は2~3㎝程度のものが多い。(種類によっては、大きくなると10㎝程まで成長するものもいる。)
- 内臓の色が透けて見える。(ピンク色)
貝類の一種である「クリオネ」は、ほとんどがタンパク質でできています。
そのタンパク質は、質が高い=透明度が高いので、透明度が高いクリオネは、良質なタンパク質を持っている生物と言えますね。
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2体の構造
クリオネの体の構造についてもみていきましょう。
構造と特徴
- 体は、頭部、胴部、足部に分かれています。
- 頭部にはバッカルコーン(buccal cone、口円錐)と呼ばれる触手が6本あり、獲物を捕らえるために使用する。
- 胴部は細長く、触手を持つ頭部に比べ透明度が高い。
- 「翼足」と呼ばれる足部は、移動するために羽ばたくように動かしている。
- エラがなく、呼吸は皮膚呼吸。(体の表面から水中の酸素を取り込む)
このような体の構造と特徴を持っています。
一口メモ
これは、裸殻翼足類共通の特徴でもあります。
またクリオネは歯舌(しぜつ)という器官を持ち、そこで餌をかきとったり、やすりのような構造により消化を助けています。
歯舌は、軟体動物の中でも腹足類(巻貝の仲間)や頭足類(イカ・タコの仲間)などに特有の器官なので、同じ貝類でも二枚貝は持っていません。
クリオネは、かわいいだけでなく、貝なのに貝殻がないなど、面白い特徴を持った生物だといえますね。
実はタフな生物?クリオネの生態
「クリオネ」の驚くべき生態について、もっとよくみていきましょう。
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1生息環境
クリオネは冷たい海域を好む生物です。
そのため北極や北大西洋、北太平洋の寒冷な海水に生息しています。
また水深は浅いエリアから深海まで広範囲に分布しているのも特徴です。
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2食性
クリオネは、肉食性の生物です。
幼生期のみ、植物プランクトンを食べていて、成体は動物プランクトンを食べる肉食になります。
成体は、同じ翼足類の動物プランクトン、ミジンウキマイマイ(学名リマキナヘルシナ Limacina helicina)のみ捕食します。
捕らえた後は、ラディオラと呼ばれる咽頭を使って食べていますよ。
この姿が、「怖い」と言われる所以ですね。
一口メモ
絶食の理由
- クリオネの餌となるミジンウキマイマイは捕まえることが難しい。
- クリオネは人工餌を食べない。
これらの理由から、クリオネは何も食べずに生きています。
絶食なんてかわいそう、と感じてしまいますが、クリオネは1年以上餌を食べなくても生き続けるものもいて、飢餓状態に強い生物です。
かわいいだけでなく、実はタフな一面も持つのがクリオネ。
餌を得られる自然界での寿命は、未だ解明されていないそう。
まだまだ研究の余地のある生物で、興味深いですね。
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3繁殖
クリオネは、雌雄同体(両性具有)の生物です。
互いに精子を交換して受精し、全体がゼラチン質で覆われたゼリー状の卵の塊(受精卵)は、水中に放出され、幼生はプランクトンとして漂いながら成長します。
卵の塊には、100~2000個の卵が入っているのだそう。
卵から3〜4日で孵化し、幼生となり、壼のような形(巻貝のよう)になりますが、2週間ほどで殻を捨て、繊毛を持った多輪形幼生となり、半年後成体となります。
クリオネの種類
実は「クリオネ」は、世界最大の大きさとなり「クリオネ・リマキナ」以外にも種類が存在します。
世界中にクリオネ科の仲間は16種(亜科を含めると24種)もいるんだとか。
代表的なクリオネの種類
- ダイオウハダカカメガイ(クリオネ・リマキナ(Clione limacina))
- ハダカカメガイ(クリオネ エレガンティッシーマ(Clione elegantissima))
- ナンキョクハダカカメガイ(クリオネ・アンタクティア(Clione antarctica))
の3種類です。
それぞれの違いをおさえておきましょう。
ダイオウハダカカメガイ(クリオネ・リマキナ)
クリオネの中で最も有名な種が、ダイオウハダカカメガイです。
ダイオウとつくように、クリオネの中でも大きな種で、最大10㎝ほどに成長するものも。
ダイオウハダカカメガイの特徴
体長 | 約2~10㎝。 |
生息地 | 冷たい海域。(北極圏、北大西洋) |
食性 | ミジンウキマイマイ |
透明で繊細、クリオネの種類の中では大きな体が特徴です。
ハダカカメガイ(クリオネ・エレガンティッシーマ)
日本でよく観ることができる種が、このハダカカメガイです。
北海道などに生息し、ダイオウハダカカメガイと長く同種とされていましたが、近年違う種と確認された経緯を持ちます。
クリオネの中でも、一番小さな種類で、日本の水族館などでは、この種が展示されていることが多いですね。
ハダカカメガイの特徴
体長 | 約1~3㎝。 |
生息地 | 冷たい海域。(北太平洋) |
食性 | ミジンウキマイマイ |
このような特徴を持ちます。
日本には流氷にくっついて訪れるため、「流氷の天使」と呼ばれていますね。
ナンキョクハダカカメガイ(クリオネ・アンタクティカ)
ナンキョクハダカカメガイは、南極海に生息するクリオネの一種です。
クリオネ・リマキナとは異なる環境に適応しているのが特徴のクリオネで、南半球に生存する唯一のクリオネ種と言われています。
ナンキョクハダカカメガイの特徴
体長 | 約2~4㎝。 |
生息地 | 冷たい海域。(南極海、その周辺) |
食性 | ミジンウキマイマイと似た小さな浮遊性の貝類を捕食。 |
このような特徴があります。
かわいらしい見た目と裏腹に、危険な種でもありますね。
日本で発見!新種のクリオネ
実は日本で2つの新種のクリオネが発見されています。
新種のクリオネ
- ダルマハダカカメガイ(2016年)
- 富山県で発見された新種のクリオネ(2016年)
これらが発見されています。
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1ダルマハダカカメガイ
ダルマハダカカメガイは、2016年に北海道で発見された新種のクリオネです。
100年ぶりの新種となるこの種は、発見者の山崎氏北海道立オホーツク流氷科学センターと共同で、「ダルマハダカカメガイ」(Clione okhotensis)と名づけられました。
種小名の「okhotensis」は、発見海域のオホーツク海の名前から取っているそうですよ。
ダルマハダカカメガイの特徴
- オホーツク海に生息する。
- 比較的小型で、体長8mm程のものが多い。
ダルマハダカカメガイは、このような特徴を持ちます。
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1富山県で発見された新種のクリオネ
2016年に富山湾でも、新種のクリオネが発見されました。
特徴
- 深海に生息。
- 富山湾、積丹半島沖、津軽海峡で発見。
今のところこのような特徴をもつことが分かっています。
しかしまだまだこの種はわからないことが多く、正式な学名や和名は決められていないそうです。
クリオネの顔がパカッ!バッカルコーンでミジンウキマイマイを捕食
クリオネは主にミジンウキマイマイという巻貝を食べるとご紹介しました。
という方もいらっしゃるかもしれません。
しかし本当にびっくりするのは、クリオネの捕食する際の顔の変化です。
水族館では、餌がなく観ることができないため、どうやって捕食しているの?という方も多いですよね。
クリオネの捕食の仕方をみていきましょう。
クリオネの捕食方法
- 頭部分がパカッと左右に割れて、中からバッカルコーン(6本の触手)を出す。
- バッカルコーンで餌となるミジンウキマイマイを捉える。
- 触手の1本を突き立てて養分を吸い上げる。
このようにミジンウキマイマイを捕食します。
時間にすると20~30分。
ミジンウキマイマイの養分を吸い取り、殻になるまで捕食します。
実際の捕食シーン
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引用:Instagram
私も初めて捕食シーンを観た時には、かなり衝撃を受けました。
クリオネは透き通った見た目をしているのに、バッカルコーンが頭を閉じているときにはわからないので、そこも不思議だなと感じました。
自宅で飼育可能!クリオネの飼い方
実は、クリオネは一般の家庭でも飼育可能な生物です。
購入できる場所や、飼育の仕方などについてみていきましょう。
クリオネの購入場所
飼育するために、まずはクリオネが購入できる場所をご紹介いたします。
クリオネが購入できる場所
- ペットショップ
- 観賞魚専門店
- 一部の北海道のスーパーなど
これらの場所で、クリオネは購入できます。
平均的な価格としては、1匹500~1500円程度。
しかし海岸などでクリオネを獲るのはNG。
漁業権に違反してしまうのでやめましょう。
クリオネの飼育方法
クリオネの飼育は、さほど難しくありません。
なぜなら、餌となるミジンウキマイマイを入手することは困難であるため、自宅で飼育する場合は、餌をあげることはできません。
そのため自宅での飼育は、クリオネが絶食して生きられる寿命=1年程度と考えておきましょう。
飼育方法
- 海水をこまめに替えてあげる。(一週間に1度、全体の1/3ずつ交換)
- 水温を0~2度程度に保つ。
これをするだけで、クリオネは飼育することができます。
また海水を替えることで、清潔に保つことができるほか、酸素の供給にもなります。
皮膚呼吸しているクリオネは、酸素を含む海水があれば、呼吸することができますよ。
ポイント
酸素を入れるために、熱帯魚用の空気循環のためのポンプを使用してしまうと、水流に巻き込まれて死んでしまう場合もあるので注意が必要です。
ゆったりと泳ぐクリオネにはポンプはきつすぎるので、使用しないようにしましょう。
また酸素補給ができるからと言って、すべての海水を替えてしまうと、急激に水質が変化してしまい、クリオネが弱ってしまう恐れがあります。
海水の交換は一週間に1度、全体の1/3程度を目安にしてあげましょう。
飼育容器は、蓋つきのものを使用し、雑菌が繁殖しないようにしましょう。
おすすめ海洋深層水
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こちらはクリオネ用の海洋深層水です。
なかなか海水を取りにいけないという方にも、安心してつかうことができる一品。
クリオネの顔は天使or悪魔?可愛いクリオネの二面性に迫る!まとめ
今回はクリオネの顔の秘密や生態についてご紹介しました。
クリオネは神秘的で、まだまだわからないことも多い生物です。
生息しているエリアが限られていることもあり、なかなか実物を観たことがないという方もいらっしゃるかもしれませんが、自宅でも飼育することが可能です。
是非自宅で神秘的なクリオネを飼育して、観察してみてくださいね。